肺炎

Pneumonia

肺炎|枚方市の内科・消化器内科・循環器内科 - 医療法人優和会 関根医院

市中肺炎

Community-acquired pneumonia

疫学

肺の構造肺の構造

わが国における15歳以上の市中肺炎の患者数は年間約188万人です。肺炎は日本人の死因の第5位であり、2020年では年間約78,500人(推定)が死亡しており、その約98%が65歳以上です。

症状

発熱、倦怠感、寒気、胸痛、咳、痰、息切れ、頻呼吸などが一般的ですが、ご高齢や免疫が低下の方では少しだるい、なんとなく食欲が湧かないなど関係なさそうな症状が出ていることもあります。
重症な方では、敗血症や呼吸困難など入院が必要な症状が出る方もいます。

分類

肺炎は、部位と原因、発生場所に分けると図のようになります。
感染症による肺炎は、ウイルス、細菌、真菌などの病原体によって起こる疾患です。
市中肺炎とは、病院外発症の急性の肺炎を指します。
院内肺炎とは、入院後48時間以降に発症した肺炎を指します。
人工呼吸器関連肺炎とは、気管挿管後48時間以降に発症した肺炎を指します。

肺炎の分類

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医療・介護関連肺炎について

医療・介護関連肺炎という語句は、今は使われていません。
医療・介護施設(ナーシングホーム、血液透析センター、長期療養型病床など)に入所中の方や90日以内に病院を退院した後に発症された方、介護を要する高齢者や身障者が発症した肺炎を「医療・介護関連肺炎」と市中肺炎を区別していました。重症化や多剤耐性病原体のリスクがある患者を識別することを目的に使用されていましたが、不適切な抗菌薬の使用につながる可能性があり、今ではこの区別を使用することはほとんどありません。

リスク要因

高齢者

年齢が上がるほどリスクが高まります。

慢性合併症

入院のリスクが最も高い合併症は慢性閉塞性肺疾患(COPD)でその他、気管支拡張症、喘息などの慢性肺疾患、うっ血性心不全、脳卒中、糖尿病、栄養不良、免疫低下状態がリスクとして知られています。

ウイルス性呼吸器感染症

ウイルスによる肺炎の後に細菌感染症を引き起こすことがあります。特にインフルエンザウイルス感染症で頻度が高い傾向です。

その他のリスク要因

意識の変化(脳卒中、けいれん・てんかん発作、麻酔、薬物やアルコールの使用など)、食道病変や、のどの運動障害による嚥下障害も誤嚥のリスクを高めます。また、ライフスタイル要因として、混雑した生活環境(例:刑務所、シェルター)、低所得環境での居住、環境毒素(溶剤、塗料、ガソリンなど)への暴露、喫煙、アルコールの過剰使用(例:80g/日以上)、オピオイドの使用などは、予防可能なリスク因子です。

原因

100以上の細菌、ウイルス、真菌、および寄生虫の原因が報告されています。特に成人における細菌性肺炎では肺炎球菌によるものが最多です。

よく見られる細菌

肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌、肺炎クラミジア、肺炎マイコプラズマ、緑膿菌、モラクセラ・カタラーシス、大腸菌、レジオネラ・ニューモフィラなど

よく見られる細菌

肺炎球菌の発生率の低下

肺炎球菌は市中肺炎の原因菌として最も多いですが、全体的な発生率は低下傾向です。これは、肺炎球菌ワクチン接種の普及により、肺炎球菌性肺炎の個人発生率が低下し、集団免疫が形成されていることが一因です。
肺炎球菌のワクチン接種率は地域によって異なるため、肺炎球菌の感染率も異なります。(ヨーロッパでは肺炎球菌による肺炎は全体の約30%ほどですが、ワクチン接種率の高い、日本やアメリカでは10~18%ほどです。)

よく見られるウイルス

インフルエンザウイルス(A型、B型)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2 型(SARS-CoV-2)、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSウイルス)、ヒトメタニューモウイルスなど

検査

  • 聴診や酸素飽和度、血圧、脈拍、体温の測定:全身の状態を確認します。
  • 胸部X線検査、胸部CT検査などの画像検査:肺炎の存在を確認します。
  • 血液検査、喀痰検査(細菌検査)など:炎症の強さや原因微生物などを調べます。

症例 1画像検査

症例 2画像検査

治療

COVID-19を除く市中肺炎のほとんどの患者では、診断時には病因が不明であり、最も可能性の高い病原体を標的とした経験的治療となります。
例えば、健康な方の軽症肺炎の場合、感染する可能性のある病原体は限られています。これに対し、入院が必要なほど重症の肺炎では、潜在的な病原体は軽症例よりも多様であり、初期治療もより広範囲な抗菌薬を選択することが多いです。
少なくとも48時間、最低5日間、発熱なく安定するまで治療します。軽症例では、一般的に5~7日間の治療が必要です。重症例や慢性合併症のある患者さんでは、一般的に7~10日間の治療が必要になります。